【感想】湯浅監督による長編アニメ映画「夜明けを告げるルーの歌」は傑作!
どうも、タコヤキです。
久々の更新になってしまいました。色々と立てこんでたので、はい。
湯浅監督の「夜明けを告げるルーの歌」を見ました。
これは、凄い実験的な映画でしたね!
それに伏線や仕掛けも多くて密度が濃いです。
見終わった時はポカーンってなりますけど、思い浮かべると仕掛けの緻密さに驚きます。
見終わった後に色々考えるような映画でした。
予告映像
基本情報
「夜明けを告げるルーの歌」
監督:湯浅政明(夜は短し、歩けよ乙女)
脚本:吉田玲子(デジモンアドベンチャー)
出演者:谷花音(君の名は)
下田翔大(アシガール)
篠原信一
柄元明(セーラー服と機関銃)
斉藤壮馬(キノの旅)
寿美菜子(けいおん!)
千鳥(お笑いコンビ)
音楽:村松 崇継(思い出のマーニー)
主題歌:斉藤和義『歌うたいのバラッド』
上映時間:107分
公開日:2017年
簡単なあらすじ
中学3年生のカイは日無町で父と祖父の3人で過ごしていた。日無町には人魚の伝説がある田舎の漁港である。カイは感情を表に出さない少年で趣味は音楽。ネットで自身の打ち込みを動画にアップしていたが、その動画を同じクラスのバンド「セイレーン」に見られ、遊歩と国夫にバンドの誘いを受ける。その後、人魚島でセイレーンのバンド練習に参加したカイは不思議な歌声を聞く。その夜、カイは人魚と出合ったー。
「夜明けを告げるルーの歌」の見所
・湯浅監督初の完全オリジナル長編映画
・他のアニメには見られない実験的な取り組み
・様々な仕掛けと考察しがいのある内容
こんな人にオススメ!
・湯浅監督が好きな人
・ジブリ映画が好きな人
・考察しがいのある映画が好きな人
こんな人にはオススメできないかも。
・ジブリっぽいのが苦手な人
この作品が好きな人にオススメ
・夜は短し、歩けよ乙女
www.takoyaki-blog.com
・崖の上のポニョ
・四畳半神話体系
感想:仕掛けと実験がてんこ盛りで、考えるのが楽しい映画!
テーマに関して思うこと
すげー密度濃くて見るの疲れました。
絵柄的には軽いけど、内容はぎっちりです。
湯浅監督曰く、同調圧力の強い現代に好きなものを素直に好きと言えるか?という疑問からこの映画は始まったとのことです。
主人公のセイは複雑な過去からずっと、好きなものも好きとは言えず、こっそり動画投稿しながら普段は感情を見せないように生きています。
ルーとの出会いをきっかけに、セイは明るく振舞うようになるのですが、ルーが自分の下から離れたときはまた心を閉ざしてしまします。感情の起伏が激しいです。
主人公を通して、好きなものに素直に好きと言えるかは実は違うと思ってて、この映画ではセイ以外の人達も自分の好きな道に歩んでいくんですよね。
セイレーンの連中は自分と向き合って進路を決めてるし、セイも自分の進路を決めます。彼らは音楽に何を求めていたのか。
みんなからの注目を集めたかった遊歩、特定の誰かと心を通い合わせたかったセイ。
彼らにとって音楽とは、自身の求めていたものを媒介としての役割を果たしていたのかな、と思います。素直な自分の欲求を何かでごまかしながらも外に向けて発信したかったのだと思います。
最終的にはみんな音楽から卒業して、自分の進路を決めています。
自分の素直な欲求を認め、受け入れてようやく自分たちで選択をすることができたのです。
自分の心の欲求に素直になり、認めながらも道を選択していったわけです。
素直に好きな気持ちにしたがって、欲望のままに生きていくことを描いているわけじゃないんですよね。自分の心に素直になって、そこを踏まえた上で行く道を決めいるのです。
日無町にようやく光があたったのは、彼らの心、素直な気持ちに光が当てられたというメタファーなのではないかと思います。
後は、どのキャラクターも心のどこかで好きを隠し持っています。
セイのお父さんもバンドやっていたころのテープをこっそり持ってたし。
おじいちゃんおばあちゃんも大切な人をずっと心に隠してきました。
終盤ではそんな心がそれぞれの形で開放されていき、ラストでその気持ちを受け止めながら現実と向かい合っていきます。
ここでも、いきなり好きなことで生きていく!ってわけじゃなくて、心が好きだと叫んでいることに光を当てて、それを認めながら現実で選択していくというわけだと思います。
現実では好きなことだけしても、生きていける人なんて一握りです。
けど、その好きな気持ちを押し殺すことは寂しく、悲しいこと。
好きな気持ちをきちんと認めてあげて、光を当ててやらないと好きなものも死んでいってしまいます。その気持ちを大切にしてやりなよ。ってことではないかなぁ。
設定に関して
最初はルーは人魚ではなく、吸血鬼という設定だったらしいです。
まあ、噛んだら人魚になるってどう考えても吸血鬼ですよね。。。
本作設定も結構凝っていて、伏線もよくできています。
考察していくのも本作の楽しいところのひとつです。
おじいちゃんやおばあちゃん、保健所の犬たちが人魚となったのは恐らくですが、死亡してしまったのだと思います。
おじいちゃんたちに関しては遺影が出ていますし、犬たち多分ですが殺処分の対象となっていた犬たちだったのではないでしょうか。(心が痛む・・・)
そう考えると人魚たちの世界は死後の世界とも捉えることもできますし、夜の海が死後の世界に関連していると考えられますね。そこでも心の開放という言葉はつながってくると思います。
セイの過去についても多くは語られていませんが、ラストで手紙を書いているシーンと大量においてあった手紙のことを考えると、セイが過去にどれだけ葛藤を抱いていたかがわかると思います。
このあたりも良く踏まえた上でもう一度見直すと新しい発見があるかもしれませんね。
アニメとして
アニメとしてはかなり実験的な取り組みをしていました。
ディズニーのようなカトゥーンの動きを取り入れたり、音楽と合わせたフラッシュアニメなど他のアニメには見られないような描写です。
ここに湯浅監督のテイストが入っているのだから、唯一無二のアニメとして出来上がっています。映像的には見ているだけでも圧巻です。
オープニングの躍動感は一度は見てみてもらいたいものです。
まとめ
という訳で「夜明けを告げるルーの歌」はテーマ的にもちょっと刺さるところを含みながらも、アニメとして様々な仕掛けをかけている壮大なアニメでした。こんなに内容がぎっしり詰まったアニメは最近では中々見られないと思うので、ぜひ興味のある方は見てみてください。
今回は以上です。
ーそれでは、また。