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多角的に見る事ができる傑作映画。是枝監督「万引き家族」感想

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 どうもタコヤキです。
 話題の映画、是枝監督の万引き家族を見てきました。


 久々に密度の濃い邦画が生まれましたよ。今村昌平監督の「うなぎ」ぶりのパルムドールも獲得したし、まずはおめでたい限りです。

 

 かなり社会的なテーマも包括しつつ、人に問いかけるような映画です。見終わった後にとても語りたくなる映画。

 

 この歴史的作品を見逃す手はありません。

 

予告映像


【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告

 

基本情報

万引き家族
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
原案:是枝裕和
製作:石原隆
    依田巽
    中江康人
出演者:リリー・フランキー(東京タワー)
     安藤アクラ(愛のむきだし
     松岡茉優コウノドリ
     池松壮亮ラストサムライ
     城桧吏(僕だけがいない街
音楽:細野春臣
上映時間:120分
公開日:2018年6月8日
パルム・ドール賞受賞 


簡単なあらすじ


 東京の下町で過ごす一つの家族がいた。父の治は日雇い労働者、母の信代はクリーニング店で働いている。そしてその息子の翔太と娘の亜紀。最後に家主である祖母初枝の5人で過ごしていた。だが、この家族の収入源は初枝の年金、わずかな仕事の収入。そして治と翔太の万引きだったー。

 

万引き家族」の見所
・現代における家族に対する問題提起
・多角的な社会的問題をはらんだシナリオと設定
・音とカットの繊細さ

 


こんな人にオススメ!
・ヒューマンストーリーが好きな人
・是枝監督作品が好きな人
・社会的なテーマをはらんだ好きな人

 


こんな人には向いていないかも
・政治的な人(右左)
・ヒューマンストーリー苦手な人

 


こんな作品が好きな人にオススメ!
自転車泥棒トリュフォー
・うなぎ

www.takoyaki-blog.com

 
・私は、ダニエルブレイク

 


感想:社会問題を多角的見る事ができ、家族の在り方を考えさせられる


 個人的には素晴らしい映画だったと思っています。

 

 多角的な見方ができ、社会的な問題を自然に描いている姿は喜びも悲しみもすべて内包されている。それだけでなく、カットの力強さと工夫。舞台設計や音の使い方などがとても印象的でした。

 

 けど、これ日本じゃそこまでうけはしない気がするんですよね。話の内容も映画手法や演出もイタリアやフランスよりだからです。

 

 残念なことに政治関係に巻き込まれて、話題になってしまってますが・・・


 
 とにかく色眼鏡でこの作品を見ないで欲しいです。
 自然のままで見て下さい。

 


家族のあり方と社会の問題

家族のあり方

 

 日本で家族というと、暖かいイメージが強いと思います。クレヨンしんちゃんサザエさんちびまる子ちゃんなど、おおよそ家族は暖かいですからね。

 家族の暖かさや絆をテーマにした国産のフィクションはたくさんあります。だから日本では家族とは暖かくて、愛があるというイメージが強いと思っています。

 


 ですがその家族が酷いものだとしたら?

 


 万引き家族に出てくる子供達は、暖かい家族というものを知りません。
 警官の受け答えにもキョトンとした顔で聞いているのも印象的。

 

 ですが、万引き家族では裕福ではないにしろ、救ってくれたり触れ合いがありました。暖かさや愛を知らない祥太とリンは、万引き家族によって暖かさを知りました。

 

 万引き家族は犯罪ですが、真っ当な家族を得られなかった彼等はアンダーグラウンドの下でせめてものの暖かい家族を演じていたのです。

 

 ですが、そのような家族は当然ながら崩壊していきます。現実はそう優しくはありません。家族は終了し、バラバラになっていく。待っているのはそれぞれの現実でした。

 

 祥太のラストは自立という言葉がしっくりきます。
 祥太は万引きに対して、生きるのには仕方ない反面、嫌悪感を抱いてました。

 

 父の治に対しても複雑な気持ちを抱いてた。自分を救い、犯罪を教えてくれたが、楽しくて暖かい日々をくれた父。

 

 祥太はかりそめの家族と父と決別し、自分の道を歩いていきます。彼は本当の家族というものがいなくても、成長していったのです。

 

 

 反対にリンはまだ自立できるほどの感情も精神性もありません。

 

 ですが、リンは元の家族では得られなかった万引き家族との暖かな思い出があります。この思い出がなく、元の閉鎖的な家族でリンが暮らしていたことを考えると寒気がする。何も楽しい記憶も愛もないのだから。

 

 彼女もじっとしゃがみ込んでいた頃とは違います。ベランダでのシーンは彼女は外の世界を知り、見ることができるようになりました。

 

暖かさがない家族の外側を知った。だけど、まだ外側にはいけない。

ラストシーンはそのことを暗示しているのかと思います。


 万引き家族のメンバーは、生まれた家族では満たされなかったものたちです。万引き家族とは、社会的弱者が自然と形成した、儚いセーフティネットだったのだと思います。

 

 そしてそのセーフティネットが子供たちを成長させました。元の家族ではそれが出来たでしょうか?それは血の繋がりは関係あるのでしょうか?父親、母親とは何なのでしょうか?

 


社会問題に関して

 この映画では、マスコミの姿も印象に残るものがありました。

 一般論や常識を当てはめて、質問してくる人たち。彼等は所謂世間というものの表したかのような役です。

 

 そんな一般論や常識から外れてしまっている万引き家族。マスコミや刑事が彼等のいう事に呆気にとられてしまう。だから、頭がおかしいみたいな扱いになってしまう。

 こういった理解できないほどのバックグラウンドがある人々は、表の社会では認知されないのです。

 そういった認知されないような人間に対して社会はどうするのかー。

 

 この映画はそういった社会から認知されないような人間を自然的に描いているので、とても強烈に写ります。

 

 万引き家族はそういった社会的メッセージの強い作品でもあります。近い作品では「私は、ダニエルブレイク」というのがあるので、そちらもぜひ見てください。

www.takoyaki-blog.com

 


最後に

 色々書きましたが、またまだ色々な見方ができる作品だと思います。そして、とても美しくて濃密な作品です。ここ近年でかなりの傑作邦画だと思いますので、ぜひみてみてください。

 

 今回は以上です。
 ーそれでは、また。