貧富の差を超えた家族観と幸福。是枝監督映画「そして父になる」感想
どうも、タコヤキです。
是枝監督の「万引き家族」が反響が大きいようで、なによりです。
そんな是枝監督の作品をもっとピックアップしようと思いました。
んで、今回は「そして父になる」という映画の感想です。
是枝監督の作品は家族をテーマにしたものが多く、音やカメラカットの使い方が非常に多いです。「万引き家族」で是枝監督に興味を持った方はぜひこちらの作品も見てみてください。
予告映像
基本情報
「そして父になる」
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演者:福山雅治
真木よう子(パッチギ、ゆれる)
尾野真千子(クライマーズ・ハイ)
ピエール朧
二宮慶多
國村隼(アウトレイジ、地獄でなぜ悪い)
田中哲司(緊急取調室)
夏八木勲(戦国自衛隊)
樹木希林(わが母の記)
リリー・フランキー(万引き家族)
上映時間:120分
公開日:2013年
簡単なあらすじ
エリート街道を歩んできた野々村良多と妻みどり、そして2人の子供の慶太は誰もがうらやむような生活を送っていた。しかし、そんな家族のもとに慶太を生んだ病院から衝撃のことが告げられる。慶太は野々村の子供ではなく、別の子供であるー。出産時に子供の取り違いがあった、と。野々村家の実の息子は小さな電気屋を営んでいる斎木家の子供だった。2つの家族は子供の交換に関して話をし始めるがー。
「そして父になる」がオススメ理由
・幸福の形を考えさせてくれるストーリー
・きれいな情景と繊細な演技
・格差と幸福を考えさせられる家族構図
こんな人にオススメ!
・ヒューマンストーリーが好きな人
・万引き家族が好きな人
・家族間の話が好きな人
こんな人にはオススメできないかも・・・
・ヒューマンストーリーが苦手な人
・是枝監督が苦手な人
こんな映画が好きな人にオススメ
・万引き家族
感想:格差を超えた幸せを求める映画
エリートの家庭とそうでない家庭の子供の取替えがメインテーマとなる映画。
子供の取替え問題も大きなテーマなのですが、それ以上に描きたかったのは貧富の差を越えた家族の幸せな形なのではないか、とも僕は思います。
この映画の特徴は、2つの家族の対比。
裕福な家とそうでない家の対比が露骨です。相変わらず生活観のリアルさはすさまじいです。家の中といい、食べ物といい緻密な家の中が描かれています。見ていて飽きないですね。
万引き家族でも感じましたが、是枝監督の作品は家庭の中の描写が本当に丁寧でリアルですね。なんかうちのおばあちゃん家こんな感じだったなぁって感じるようなところがある。
世代によってはノスタルジアを感じる人も多いと思う。逆に若い人にとっては、共感できないところが多い気がする。
映画では、野々村家の失ったものが焦点が当てられています。
野々村家の父はエリートで仕事も忙しく、子供の教育にも厳しいです。
そんな父を持つ子供にとっては、ネグレクトまではいかないけれど、どこか疎外感や孤独を感じてしまうんですよね。これは妻も同じです。
これは裕福層のみが抱える問題か?といったらそんなことはないと思いますね。
どの家族でも抱える可能性がある問題です。ワープアとかありますし。
裕福層という設定のほうがこの問題は明確になると思います。
そういう家族の中で、子供も妻も父性に飢えるようになってしまうのです。
その父性への飢えを、お世辞にも裕福とはいえない斎木家に求めてしまうわけですね。
仕事人としての野々村は完璧に見えるんだけど、父親としては不十分だったってことですね。子供に向けられた愛情も妻の思いも気がつかずにショックを受けているシーンが折り紙の花のシーンだったり、カメラのシーンだったりするわけですね。
そんな野々村の父が、家族に求められる父親になっていく。そして父になる。というのが大きな流れです。タイトルがストレートで心地よい。
父になることに貧富の差はなく、家族が幸福になるために多少の貧乏は関係ないみたいなことを伝えなかったかも。この映画が良心的なところは、斎木家が多少貧乏でも普通に生活していけてるということですね。もっと貧していれば話は全然変わると思います。
ある意味格差社会へのアンチテーゼ、あるいはエリート主義へのアンチテーゼともいえる作品かもしれない。もちろん、子供取替え問題としても考えさせられる。そういった多角的な見方もできる作品です。
そして、それが自然的に包括されているのがいいです。終わり方もベストな形で終わった映画だと思います。余韻もよし。
是枝監督の作品は一見、日常的なシーンが多いのですがその中で色んなものが詰まって、色んな考え方をできるのが素晴らしいです。なおかつそれが自然的なところが素晴らしい。
「そして父になる」はドラマチックな作品ではあるが、同時に多角的な見方もできる作品です。とても美しい作品ですので、ぜひ見て下さい。
今回は以上です。
ーそれでは、また。