この1冊でニートの誤解がすべてとける!二神能基「希望のニート」感想
どうも、タコヤキです。
小説でも映画でもないんですが、今回は二神能基さんの「希望のニート」という本です。タイトルの通りニートの話です。
作者の二神さんはNPO法人ニュースタートの設立者です。
そして、NPO法人ニュースタートは、ニートや引きこもりの再出発を支援する機関です。千葉県浦安市にあります。
今年の2月10日にニート祭りが開催されましたが、そのニート祭りの主催者です。
ニート祭りに関してはこちらの記事をどうぞ。参加したので。↓
二神さんは多くのニートや引きこもりの若者と向き合ってきました。
そんな二神さんが現場から書く、ニートや引きこもりの実体、そしてその親といった深いところまで切りこんで、社会が抱える見えない問題に関して書かれています。
ニートの人でもニートでない人でもぜひ手にとって読んで欲しい1冊だと感じました。この本にニートや引きこもりの本質的な問題を突いています。そして、その問題は現代社会でも人事じゃないということに気がつきます。
むしろ、最初から気がついてたけど気がついていないフリをしていたのかもしれません。
ニートになってしまう人
二神さんによれば、ニートになってしまう若者は世間で言われるような
「いやだ。働きたくないでござる」
という人ではないとのことです。(もちろんそういう人もいるけど)
では、どんな人がニートになることが多いのか?
それは、真面目な人です。
ニート本人は真面目だし、その両親も真面目な人が多いとのことです。
もちろん全員が全員そうだというわけではないですが、そういう人が多いということです。くわえて、就業経験があるニートはかなり多いです。
ニートは働きたくないではなくて、働けない人たちなんです。
そこにはちゃんと理由があります。
ニートの親たち
ニートの親には真面目な社会人みたいなタイプが多いそうです。
サラリーマンとして普通になんとかなった層ですね。
このニートの親の特徴がこの本え一番印象に残りました。
50~60代の親のほとんどはサラリーマンという生き方しかしりません。
なぜならサラリーマンがそれなりにお買い得な職で、そこそこの給料と安定がそこそこ保証されていたからです。
そんな生き方しか知らない人たちは子供に何を教えるのかというと、、、
良い大学に入れ、良い会社に入れ
としか言えないわけです。しかし、これには重大な落とし穴があります。
それは、サラリーマンの没落。
リーマンショックなどでサラリーマンはいきなり首を切られたり、あるいは部下の首を切らなくてはならない立場になりました。
その頃のサラリーマンは誰もが苦しく、終身雇用は幻想だったということに気がつかされます。昔は信じてた良きサラリーマン生活が嘘っぱちになった瞬間です。
さらに悲惨なことに彼らはそれ以外の生き方を知りません。
今更生き方を変えることのできない大人が嫌な思いをしてまでも、必死に会社にしがみついているのです。ボロボロになりながら。
子供はそんな大人の姿を見て育ちます。
そして、尋ねるわけです。
サラリーマン生活は幸せだったのか?と。
大人はそんな子供の質問に答えることができるのでしょうか。
何か幸せの哲学や、気概、信念を答えられるのでしょうか。
会社人生に生きがいや希望を答えられるのでしょうか。
社会から捨てられまいと必死にすがる大人たちにもそれが分からないのです。
そういった宙ぶらりんの親が宙ぶらりんな人生論や進路を言っても子供の心には何も響かないのでしょう。どうすればいいのか分からない。気持ちが体に追いつかない。
大人も子供もみんな迷子みたいなものだったのです。
ではどうやって生きていけばいいの?
どうすればいいのか分からないといったて何もしないのは、はやり良くありません。あせるのはもちろんもっと良くないですが。
どうやって生きていけばいいのか分からなければ、せめて常識のハードルを下げて、少し生きるのを楽にしましょう。かつての昭和の常識に囚われることはありません。
二神さんは「ニートの自立は50%でいい」とか「人間としてただ楽しく生きろ」とこの本では言っています。
これは生きるハードルを下げることだと僕は思います。今の社会は求める人材のレベルが高くなっている。その反動でもあるとも思う。「○○ができなければ~」とかそういうのが多すぎだ。
今の大人は夢を持てとか、やりがいを持てとか、そういう情熱的でキラキラしたこと言っていますが、実際にそんな仕事をしている大人なんてほとんど見ません。
正直、勝手に盛り上がっているだけに見えます。
さらに言えば、夢が無くても楽しく生きられないというわけでもないと思う。
あまりにも人生にボリュームを持たせすぎだ。
そんな重圧で心を壊されるくらいなら、もっと自然的に生きたほうが良いし、無理に夢やモチベーションを高めることもないと思う。
自立に関しては昔は一人暮らししなきゃだめだとか、家をでなきゃだめだという論調が強かったところがある。
しかし、現代は日本人の収入自体が減っているので、一人暮らしも気軽にできるものではなくなった。仕事ですらままならない場合があるのだから、昔の定義での自立というものはハードルが年々高くなっているはずだ。
だから自立はとりあえず少しでいい。今はシェアハウスなんかもあるし、人に頼ってもいい。そもそも多数で生活したほうが生活費は安くなる。お金が少なくなった日本では当然の流れだ。昔は長屋なんてものもあったし、無理して自立を目指すよりも協力して生活したほうが生存戦略としてよいと思う。
あと個人的に思うのは目的なき上昇志向がまだ蔓延しているように思える。社会全体のレベルが上がる分にはかまわないのだが、それがかえって人を追い詰めてしまうことがある。
停滞だって人間の行動の一つだ。疲れたのなら休んでいい。壊れるほど、ましてや自殺するほど価値のある仕事なんて、一般人にはほとんどない。少し立ち止まって考えるのも必要なことだろう。
この本に書かれている社会復帰を果たしたニートで、ちょっぴり人の役に立てる仕事が嬉しいといっていた若者が書いてあった。
仕事はなにも上司の言うことや、利益を上げることがすべてではない。
人が笑ってくれたり、楽をさせてあげることで充実感を得ることができるのだ。
お金の問題がネックになるが、この感性は今の日本に枯渇してしまったものに感じる。
そんな働く意味深く考えているニートが動き出したらー。
そこには希望があると思う。真の意味で豊かな社会が見出せるのではないか。
ちょっと社会の雰囲気というものが変わるのではないか。
この希望のニートという本は、そんなニートたちが希望を持ち、もたらすかもしれないということを感じさせる本だった。
今回は以上です。
ーそれでは、また。