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【小説】筒井康隆作品「モナドの領域」感想

 

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どうも、タコヤキです。
最近は本を読む事が多いです。寒いからです。嘘です。映画見る時間が最近取り辛いだけです(涙)

というわけで、今回は日本のSF小説です。作者は「時をかける少女」や「パプリカ」、「旅のラゴス」で有名な筒井康隆大先生です。
タイトルは「モナドの領域」

 

筒井先生曰く、自身の最高傑作だそうです。
期待して読みました。


感想を一言で言うなら・・・「めちゃくちゃ楽しく書いただろうな(笑)」

 

簡単なあらすじ


 とあるところで女性の手が落ちていたと警察に通報されたところから物語は始まります。
 そして別のところで異変が起こります。とあるパン屋のアルバイトの大学生が女性の腕のパンを作り上げてしまいます。その大学生は目が朦朧としてなんだかおかしな状態でした。そのパンは話題となり、マスコミもきてしまう始末。もちろん警察も事件に関わっているのではないかとみなすが・・・。

 

 

モナドの領域はどんな人にオススメ?
筒井康隆先生が好きな人
・神や哲学が絡んだ小説が好きな人

 

どんな人には向いていない?
・SF小説とか無理な人
・神や哲学が関わる話が苦手な人

 

どんな作品が好きな人にお勧め?
ヴァリスフィリップ・K・ディック
ドストエフスキー
時をかける少女

 

感想:最高傑作というよりは、一番楽しく書いた小説ではないかと。

 

 「モナドの領域」はタイトルで感じるほど、話自体は難しくはありませんので案外スラスラ読めます。てかかなり読みやすい。アニメとか漫画とか精通している人にとっては、すとんと簡単に入ってきます。

 

 最初はミステリー路線かと思いましたが、途中から全然違う話になります。
 完全にSFの話になり、宇宙意思とか平行世界の絶対者のようなものが永遠と人間相手に語るような感じです。この時点で読み気が削がれる人も一定数いると思いますが、とても読みやすい部類に入るので安心してください。

 

 さて、物語は全てその絶対者が仕組んだこと。操っていたことが除々に分かっていき、人目にも晒されていきます。その絶対者の存在に縋ろうとする人間の儚さったらありゃしないです。

 

 まぁ、それはさておき、この小説は話自体は特別面白いって唸るほどのものはないんですけど、読み終わった後の心地よい空虚感がツボです。
 人間達が生きている世界は、絶対者にとっては、人間が読んでいる小説のようなものということを絶対者に言われます。
 さらには人間の運命はほぼほぼ決まっており、それを覆すのはまず不可能という絶望的なことも書かれているんですけど、読み終わった後はむしろさわやかさを覚えます。

 

 最終的にはその絶対者の存在をみんな忘れてしまうんですが、それでもみんなそれなりに笑って楽しく暮らしているんです。1冊の小説のような空虚な世界でも、悪くないよ。となんだか笑いながら言われているようでした。

 

 実際この小説最後に笑いを取りにきているところもありましたからね。
 「時をかける少女」のくだり。完全にパロディだし、作者自身も登場人物の一員になってるし。空虚だけど、どこか微笑ましいんです。この小説。

 

 この小説は現代社会への警告と捉える人もいるのだけれど、僕は違うと思う。
 これは空虚な世界で生きる人間の肯定の話だと思う。人間賛歌。

 

 人間には認知できないものに愛されているし、誰一人この物語では不幸になっている人はいない。戦争を語る絶対者は、それも人間の自然な営みで美しいという。
 あくまで人間は自然的なものとして捉えている。
 人が滅ぶこともまた、自然の理。
 しかし、絶望することはなくて、絶対者が消えたその後も人々はそれぞれ生きていっています。この小説、世界の中で。

 

 そんな人々の微笑ましい姿を書き、挙句には自分をパロディにしたりと、書いててすごい楽しかったんじゃないのかなぁ、なんて思いました。

 

 筒井康隆先生の作品が好きな人はぜひ読んでみてください。
 今回は以上です。
 -それでは、また。