超鬱だけど力強いヒューマンドラマ!映画「裁かれるは善人のみ」感想。
どうも、タコヤキです。
今回はロシアの映画、「裁かれるは善人のみ」を見ました。
アマゾンビデオでも見れますよー。
この映画、一言で言うなら、、、「救い無しでメッチャ鬱」
基本情報
「裁かれるは善人のみ」
監督:アンドレイ・ツビャギンツェフ
音楽:フィリップ・グラス
共同脚本:オレグ・ネギン
キャスト:アレクセイ・セレブリャコフ
エレナ・リャドワ
ウラディミール・ヴドヴィチェンコフ
ロマン・マディアノフ
簡単なあらすじ
モスクワから離れた小さな田舎町。自動車修理工を営む主人公コーリャはそこで静かに慎ましく生活していた。ある日、コーリャの持つ土地が市長の手によって収用されようとしていた。不満のコーリャは市長相手に訴訟するが、思ったようにはいかない。
コーリャは昔の知り合いである弁護士、ディーマに相談して一緒に市長と戦おうとする。しかし、事は予想外の展開になっていく。
「裁かれるは善人のみ」の見所
・全く救いのないストーリー
・権力批判の映画
・終始緊迫していて、酩酊感漂う雰囲気
どんな人にオススメか?
・ハッピーエンドではない映画が好きな人
・ロシア映画が好きな人
・ヒューマンドラマが好きな人
逆にどんな人にはオススメできない?
・くらい話が苦手な人
・ロシア映画が苦手な人
どんな作品が好きな人にオススメ?
・どん底(黒澤明監督)
・父、帰る
・惑星ソラリス
感想:圧倒的に救いのない、されど力強いヒューマンドラマ
ロシア映画の真骨頂を見た気分です・・・。
文学でもそうですが(ドフトエフスキーとか)、ロシアの創作物は基本的に明るい話はないです。見た事がない。あったら誰か教えてください。
「裁かれるは善人のみ」は主人公コーリャはタイトルでも察することができますが、悲惨な結末を迎えます。コーリャの周りの人たちも。
権力への反抗
この映画のホームページでもありますが、元ネタとしてトマス・ホッブスの「リヴァイアサン」があります。リヴァイアサンは人間はそのままだと自然と争うようになるが、自然権を国家に譲渡して、その国家の庇護の下で生きていくということが書かれています。しかし、その国家こそタイトルのリヴァイアサンであり、手なずけられないモンスターであるとあります。
簡単に言えば、国家は必要悪でるということです。
さて、この映画ではリヴァイアサンのポジションを取っているのは市長であることはだれもが思うところであると思います。
しかし、市長自体がリヴァイアサンでなく、その背後の権力こそがリヴァイアサンであると私は思いました。
なぜなら冒頭で市長は用済みとなったら切り捨てられると言われています。実際に市長も今の権力を維持するのに精一杯です。
コーリャたちからみた権力は暴力的なモンスターですが、市長から見たら魅惑的で逆らえないモンスターなのです。
コーリャは権力に反抗していましたが、市長は従順になっているだけではないのかと思います。権力というリヴァイアサンには逆らったら排除されるので、従順しかない。
だから市長はリヴァイアサンではなく、立場がコーリャとは違うだけだと思いました。
神に関して
ロシアの創作物で必ずと言っていいほど登場するのが神に関することです。
ドストエフスキーなどではかなり突っ込んだ宗教的なことが書かれていますが、この映画ではそこまで宗教に関する知識がなくとも大丈夫です。
コーリャは自分に降りかかる不幸から、神などいないと思うようになります。
彼の周りの人も神の不在を嘆き、涙するもの、支えあおうとする人達で一杯です。
しかし、市長は違います。彼は最後まで神に感謝を捧げています。印象に残るのは市長の子供の天井を見つめる瞳でした。あの子供は神を信じているのでしょうか。
にしても散々汚職しているくせに、神はすべてをみているとか言ってるんですよね。この市長。本心では神の存在なんて信じているのか疑問です。
神に関することは難しいので、そこまで深く突っ込んでいけないのですがが、神は人間の祈りなんて聞いてないし、無関心であるような存在として書かれているなぁと印象に残りました。
すくなくとも、神を信じてよかったーっていう人は出てきてませんもの。だからこそ、酒とタバコがたくさん出てきているのです。少なくともそれらは神よりも心を癒し、ごまかすことができるから。
うーん。うまく書けない。
だれかこのあたり詳しい人がいてくれたら、解説お願いしたいです(笑)
演出について
演出は印象に残る素晴らしいものに仕上がっていると思います。
役者の演技もそうですが、ところどころにある自然のシーンがかなり良いです。
打ち寄せる波と無残に朽ち果てている鯨の骨。
自然という巨大な力に逆らえず、為すがままになっている鯨の骨は、コーリャたちの姿を想像させます。この背景は映画的に素晴らしいカットになっています。美しいです。
この背景を見ると、はやり権力というは自然的なモンスターであり、必要悪であるという冷たい現実が強いのかなと思います。
しかしこの映画、希望は残してあります。
それはコーリャの息子と引き取ってくれた夫婦。
自然的な権力の前では支えあって生きていくしかない。そういったことも描いている強くて優しいシーンも確かに存在しているのです。
自然的な権力からは未を寄せ合って支えあって乗り越えていくしかないという強さも描かれています。
まとめ
「裁かれるは善人のみ」は国家権力を自然的に描き、それに対する人々の在り方を表わしている映画だと思います。
暗いシーンが多く、BGMも少ないので辛いと思いますが、登場人物の感情の揺れ動きや、冷酷で現実的な展開は観客を飽きさせないつくりとなっています。
ロシア映画を見たことのない人はぜひどうぞ。
今回は以上です。
ーそれでは、また。