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再生の物語。ロバートゼメキス監督「フライト」感想!

 

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どうも、タコヤキです。
今回はロバートゼメキス監督の「フライト」の感想を書いていきます。

 


これは結構人によって評価が真っ二つになると思います。

っというか、映画的な面白さとそそうでないところがはっきりしている作品なんです。
ある人は「教科書にすべき」と、ある人は「最初だけ」という人もいます。
僕はテーマ的には好きなんですけど、映画的には構成的によくないなと思います。

 

基本情報

 「フライト」
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ジョン・ゲイティング
製作:ローリー・マクドナルド
出演者:デンゼル・ワシントン
    ケリー・ライリー
    ブルース・グリーンウッド
    ドン・チードル
    ジョン・グッドマン
    メリッサ・レオ
音楽:アラン・シルベストリ
上映時間:139分
公開日:2013年

 

簡単なあらすじ

 ウィップが操縦する航空機が機械関連のトラブルで突然急降下を始める。ウィップは決死の思いで背面飛行という荒業を成し遂げ、航空機を不時着させることに成功させる。一歩間違えば乗客乗員100名の命を失うところだった事故をウィップは防いだ。だが、死傷者も数名でてしまった。世間やメディアはウィップを英雄と称えた。
 しかし、その先に待っていたのは責任の押し付け合い。事故直後の検査でアルコールが検出されたウィップに過失致死の適用が検討されていた。下手をしたら終身刑
 果たして事故の責任をめぐる攻防の行方は?ウィップの運命は?

 


フライトの見所
・前半の緊迫した不時着シーン
・主役の繊細な演技
・自分とは何者なのか?を真正面か向き合う映画

 


どんな人にオススメ?
・人生訓を教えてくれる映画が好きな人
・ヒューマン映画が好きな人
・ロバートゼメキス監督が好きな人

 


どんな人にはお勧めできない?
・アクションやスリラー的要素を強く求めている人
・クズ系主人公が好きではない人

 


どんな作品が好きな人にお勧め?
ハドソン川の奇跡
・ムーンライト
・ロバートゼメキス作品

 

「ムーンライト」の感想はこちらから↓

www.takoyaki-blog.com

 

 

 

感想:前半30分は緊迫のスリラー!後半はヒューマンストーリー!

構成的に綺麗に分割されている映画です。

 

 前半約30分は航空機不時着のスリラー。これはかなり緊迫していて、見ごたえのある映像となっています。背面飛行とかそんなこと可能なのかよって誰もが思う。
 人が航空機内でバウンドしているところもありますので、結構辛いところもある。
 この30分間で映画作れるんじゃね?って思うほどの出来です。
 ここまでは万人が楽しめると思います。

 

 評価が分かれるのはこの後ですね。

 主人公である機長のウィップは未曾有の事故から乗客の命を救い、英雄扱いされますが、彼から検出されたアルコールのせいで、過失致死の適用が検討されていきます。
 事故に関しては機械の不備が記録にもあり、直接的はウィップの責任ではないのですが、メーカー会社としては責任を機長に押し付けて、責任追及を避けたいところ。

 

 そもそもウィップはその時にたまたま酒を摂取していたわけでなく、彼自身アルコール中毒の毛がありました。この時の彼はまだ自分がアルコール中毒者であることに意識はほとんどありませんでした。
 ですが、そこからマスコミに対することや、直接の事故とは関係ないのに政治劇に巻き込まれていくことで、彼はさらにアルコールに入り浸るようになっていきます。
 その様子はひどく、公聴会の前日でも飲みまくり、挙句の果てにはドラッグまで摂取するようになります。

 

 そしてラストの公聴会のシーンで、彼は自分を偽ることに耐え切れなくなり、自分はアルコール中毒者であることを告白してしまいます。

 

 彼は何故アル中であることを告白してしまったのか?
 この映画の肝はここにあります。

 

 アルコール摂取したのを死者に被せることにも抵抗があるのもそうですが、彼は最後にこれで初めて自由になれたとこぼしています。
 確かに彼は英雄的で凄腕のパイロットですが、それはあくまで一面にすぎない。
 日常のときの彼は妻にも子供にも出て行かれるようなアル中。
 そして、彼はそのことを認めたくはありません。そんな惨めな自分を認めたくはないのです。

 

 だが、アル中のことをから目をそらして生きていくことは、永遠と偽りの自分(人格も優れている凄腕パイロット)を演じ続けることを意味します。
 彼はもう世間の目から逃れることはできない立場になってしまったからです。

 

 そのように自分を偽って生きていくことは、もう出来ないと悟ったのでしょう。
 だから彼は公聴会で告白することで、自分というものを殻から出してあげたのです。
 そして、自分を受け入れることがようやくできました。
 
 ラストシーンの息子の問いかけがこの映画のテーマ。


 「あなたは何者なのか」

 

 告白前のウィップだったら、おそらくこの問いには答えられなかったでしょう。
 しかし、ありのままの自分を受け入れ、心の殻を破って、自分を偽ることをやめた彼ならこの問いかけに答えることができるでしょう。

 

 彼は自分を受け入れ、自分の人生をはじめ、ようやく自由となったのです。

 


 この映画は彼の再生の物語と捉えると、非常に丁寧に作られているのですが、他者の視点から見ると理解できないところもたくさんあるでしょう。それは観客も同じです。
 ウィップの無罪のために力を尽くした弁護士や友人にとっては不本意な結果だったと思うし、会社的にも責任が生じるので社会的にはウィップが取った行動は賛美できないという面もあります。そういう面を見ると全体としては万々歳の出来とはいえないかなと思います。
 なかなか共感を得るのが難しい映画に仕上がっていると思います。

 

 今回は以上です。
 -それでは、また。