黒沢清監督によるホラー映画、「回路」感想
どうも、タコヤキです。
また、清の映画を見ました。とりあえず、ここで清の映画は一休みにしようと思います。
今回はホラー映画の「回路」という映画です。
意外な展開にびっくりします。最初やタイトルの雰囲気からは想像のつかない展開でした。
ここまでくるとホラー映画の領域を超えてしまっています。
向き不向きはありますが、一見の価値ありだと思います。
~あらすじはこちらからチェック~
~「回路」はどんな人にオススメ?~
・日本ホラー映画が好きな人
・黒沢清監督が好きな人
・哲学的な話が好きな人
~どんな人には勧めない?~
・日本ホラー映画が好きでない人
・明確なストーリーがないと不満な人
・ハリウッド映画のような展開を期待している人
~どんな作品が好きな人に向いている?~
・「CURE」
・ゲームの「サイレン」
・「叫」
~ストーリーやテーマに関して~
意外な展開になり、スケールがかなりでかくなりました。ゾンビ映画並みに世界が大変なことになります。最初の田口君の自殺とかなど、忘れてしまうほどです。
この作品のテーマは、「生者と死者の違いとは?」ということではないかと思っています。
この作品のタイトルである「回路」とは死者の世界と生者の世界をつなげる「回路」です。
作品では赤いテープが貼ってある扉がその「回路」です。
扉の向こうは死者の世界であり、幽霊の世界であります。
扉に入ってしまった人間で、死者の影響を受けてしまったも人は、黒いしみのようなものになって、幽霊、死者と同じような存在になります。順子や春江がそういった感じです。
川島とミチは何とか生き残りますが、そのときにはもう世界には人は残っていませんでした。
テレビでひたすら名前が読み上げられているシーンがありますが、それらは黒いしみとなり、死者の世界に影響されてしまったのでしょう。
川島とミチはなぜ生き残れたのでしょう?
僕はあの二人は無条件で人の存在を肯定する存在として描かれているから、なのではないかと思います。
川島は春江に自分達はたしかにここに存在しているし、今自分達が生きていることは素晴らしいことだといっています。
理屈はないんですけど、川島は人の生を無条件で肯定します。ミチも本質的には一緒なのではないかと思います。
この二人は死を忌み嫌い、生を肯定しているから最後まで死者の影響を受けにくかったのだと思います。
川島は死者に直接触れてしまったので、意思に関わらずしみとなってしまいますが。
他の人たちは何故死者に影響されてしまったのか?
死者の世界に影響された人たちは死者の世界を恐らくは直感的に理解したのではないのではないかと思います。
春江は死んだらどこにいくかということに興味を持っていましたが、同時に孤独になることを恐れていました。人は孤独で1つの点のようなものだと思っています。
そして、春江は謎のサイトを見て、死者と生者は本質的には同じであり、孤独な存在だと思い始めます。
つまり、生きようが、死のうが孤独であることにはかわりがないから、春江はあんなに苦しんでいたのではないかと思います。
しかし、春江は川島の声も届かず、やがては死者の世界では孤独ではないと確信して、自殺してしまいます。
この作品の中では、生者と死者の違いはほとんどありません。
死に恐怖するというのは、死がどういうものか、どういう風になるのか生者には分からないからです。
死者に影響された人達は死を理解していきます。
そして、今に不満をもっている人達は死者の世界に引きずられていき、黒いしみとなります。
ですが、死者の世界にいってもあまり生者の世界と変わらないと自分は思っています。
それは死者が助けて、助けてと言っているからです。
これは生者の世界でも同じで、死者の世界でも孤独や不満で苦しんでいるのではないかと思います。その孤独や不満が死者の世界からあふれ出したから、「回路」が生まれたのではないかと思います。
個人的に好きなシーン
川島と春江が一緒のときに二人が乗り合わせた電車のシーンが好きでした。
どこにいくのか分からないし、道があるのかも分からずに孤独に走り続ける電車はこの作品の生者と同じように見えます。
そんな電車で2人で一緒に進もうとする川島と、そんな電車を嫌がり電車を降りてしまう春江は綺麗な対立です。
人間はこの2タイプに分かれるのではないかと思います。
川島のように苦しくても誰かと一緒に前へ進もうとするタイプ人間。
春江のように自分の孤独や苦しみから解放されたいと願う人間。
この電車のシーンがこの「回路」という映画を一番現しているシーンではないのでしょうか。
まとめ
「叫」は僕にはよく理解できませんでしたが、この「回路」は僕好みの作品でした。
アメリカ版でリメイクもあるらしいですね。
ホラー映画でもありますので、幽霊の演出も相変わらず面白いです。
話のテーマも面白かった。
今回は以上です。
それでは、また。