【書評】夢と現実が入り乱れる世界。万城目学「バベル九朔」感想。
どうも、タコヤキです。
今回は小説の感想。
初めて読む作者だったので、ワクワクしました。
今回がその本です。
万城目学さんの「バベル九朔」です。
奇抜な設定と、テンポの良さからどんどん読んでいきたくなるような1冊でした。
ファンタジー的な要素がいきなり出てくるんですけど、どこかリアルさや懐かしさを覚えるような作風です。
サクサク小説読みたい!っていう人にはオススメですね。読書が苦手な人でも気持ちよく読めると思います。
「バベル九朔」の簡単なあらすじ
作家志望でありながら、雑居ビル「バベル」の管理人を務める主人公。
新人賞応募のために、小説を書いていた主人公は、黒ずくめの不思議な女と出会う。しかし、その女は世にも奇妙で恐ろしい目をしていた。それはカラスと同じ目をしていた。そして、主人公は不思議な世界に引きずりこまれる。
「バベル九朔」はどんな人にオススメか
・ファンタジー要素が絡むのが好きな人
・奇抜は話が好きな人
・冴えない人間が好きな人
感想:不思議要素満載!テンポが良いが、消化不良感が否めなかった。
個人的にはこういったテンポよく進んでいく小説は好きです。
どんどん勢いよくページをめくってしまいます。
けど、全体的に消化不良感が否めませんでしたね。
すっきりしない終わり方なので、そういうのが苦手な人にとってはちょっとがっかりだったかもしてません。
主人公は雑居ビルの管理人で、毎日小説を書いています。
それが無駄なのか、否かという思考のループに嵌っているんですよね。
自分のやりたいことを追っていて、全然成果が出ないー。
夢追い人には誰もがある体験なのではないでしょうか。
そして、このビル管理人をしながら小説家を目指すってのは、作者である万城目さんと同じ境遇です。いわば、「バベル九朔」は作者の自叙伝ともいえます。
この物語は、現実とファンタジーを何度も行き来しながら、最終的にはどうなってしまったのかが明確には示されていません。
そんな構成に、確かにエンタメ小説としては不満なところなのかもしれません。
でも僕はこの小説で気になることが一つあります。
バベルとは結局なんだったのかー?
しかし、この答えは作者自身にも明確な答えを出せないんじゃないのかな。と自分は思ったりします。
膨大な時間をかけて、全く成果が出ない。
現実の作者は小説家として活躍していますが、本作品の主人公は結局夢のままの状態です。そんな夢の中の状態でも少女を助けるために、3年かけた作品を破り捨てたりしています。
自分で無駄とわかっていても、書いてしまうし、ひょんなことからペンを折ってしまうこともあるかもしれない。ある日、突然自分のやってきたことがすべて無駄であったと自覚してしまう日がきてしまうかもしれない。
それらを清算するカラスは非常に現実的な存在でありながら、小説ではファンタジーの存在というあべこべな存在なのではないかと思います。
そんなあやふやで、不確かで、いつ崩壊してもおかしくないものがバベルなのではないのかとも思いますし、作者のあったかも知れないもう一つの未来かもしれないと思いました。
夢を追いかけて、無駄を蓄積していくことでやがて崩壊するバベル。
いつか現実にも起こるかもしれない、自分の世界と思い込みの崩壊。無駄な日々も終わりを告げるかもしれない。
この小説のバベルって、そんな夢追い人たちの積み上げていったものなのだと思います。崩壊してしまうこともあれば、夢が現実になったり、入り乱れたり。そんな不確かで無駄なのかもしれないけど、残しておきたくて、積み上げていきたいもの。
「続けられることが才能だ」とこの小説のセリフであるのですが、お前は無駄になるかもしれないものを積み上げていけるか?と問うているようにも感じます。
この小説のバベルって、そういう意味なのかなと思いました。
結末後の主人公は、現実に戻ってまた小説書いてそうだし、普通に就職してしまいそうだし、小説家として出デビューを果たしてもいそう。あるいは消滅してしまうことも考えられる。
この小説って、そんな不確かなものを積み上げ続けるかどうか。っていう話だと思います。
そんな無駄かもしれない妄想をつい積み上げていっちゃうわけです。
なんか美しささえ感じるなぁ。
ちなみにビル管理の仕事就きたい方はこちらの記事どうぞ(笑)▼
今回は以上です。
ーそれでは、また。