美しい純愛物語。デルトロ監督新作「シェイプ・オブ・ウォーター」感想
僕らのデルトロ監督の最新作が3月1日に公開されました。
タイトルは「シェイプ・オブ・ウォーター」
人とそうでないものが惹かれあっていく映画ですが、色彩や音楽が美しいだけでなく、人とそうでないものを超えた純愛が描かれています。
このご時勢でストレートで強烈、血みどろなところもあるが美しい。
そしてなによりも登場人物の多様さと社会的立場や声無きものの純粋な想いが胸に響く。この作品には様々なテーマが含まれている直球の純愛映画です。
基本情報
『シェイプ・オブ・ウォーター』
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ
ヴァネッサ・テイラー
製作総指揮:リズ・セイアー
出演者:サリー・ホーキンス
マイケル・シャノン
リチャード・ジェンキンス
ダグ・ジョーンズ
マイケル・スタールバーグ
オクタヴィア・デスプラ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
上映時間:123分
公開日:2018年3月1日
第90回アカデミー賞受賞 他にも色々!多すぎて書ききれんwww
簡単なあらすじ
冷戦下のアメリカ。声が出せないイライザは政府の研究施設で働く清掃員。ある日、研究施設につれられてきた半漁人を目撃する。イライザと半漁人は除々に心を通わせるようになっていきます。しかし、その半漁人は国と国の争いから実験材料として扱われるようになる、イライザは周りを巻き込みながら半漁人を救おうとする。
シェイプ・オブ・ウォーターの見所
・水と色彩、そして美しい音楽
・純愛
・多様性と社会的なテーマを包括しているところ
どんな人にオススメ?
・異形が好きな人
・純愛ものが好きな人
・デルトロ好きな人
どんな人にはオススメできない?
・いや、見てくれ。
どんな作品が好きな人にオススメ?
・パンズラビリンス
・ET
・グレイテストショーマン
感想:様々なテーマを包括しながらも美しく仕上げた極上映画!
いや~、感無量でしたね。
今の時代を含めると力強く、ストレートで強烈な作品に仕上がっていると断言できます。 デルトロ監督最高!
「シェイプ・オブ・ウォーター」は言葉を交わす事ができないものの純愛の話です。しかし、純愛とは一言で言えないほどの情報量とテーマ性がこの映画には包括されている。
主役であるイライザは特別美人でもなければ、清掃員でこれといった取り柄などない一般人。むしろ社会的立場は普通の人よりも低い。
そんな彼女が愛ゆえに政府のエリートさんの目をかいくぐって半漁人、彼を助けようとするのは王道とはいえど、熱くなるのは必須。
権威的で暴力的な人間に手話でFUCK(くたばれ)と叫んでいるところなんて最高!
普段はおとなしくてやさしい感じの人なのに笑
声無きものが、理不尽な権威に反抗するのは現代社会においても通ずるところがあると思う。
声をあげられないような目に見えないような弱者が今たくさんいます。マイノリティーと言われる人たちもです。
それらの人を無視して突き進んでいく権威的な人たちへの反抗。言葉で言わなくても伝わる怒りと反抗心はどこか見ていてすかっとします。
シェイプ・オブ・ウォーターは様々な経歴をもつ人物が登場する。イライザもその中の一人であり、彼女もどちらかというと社会的には弱者の部類に値する。彼女の周りの人々もそうだ。売れない画家や黒人女性など、いわゆるマイノリティーに属すような人々がいる。
半漁人の彼もそうだ。いわゆるまっとうな社会からは排除される存在である。映画の中では研究材料として重宝されるが、ストリックランド には忌み嫌われる。この映画では半漁人もマイノリティーとして捉えられる。
イライザが立ち向かうのはそんなマイノリティーを見下すようなエリートだ。しかし、エリート代表のストリックランドも実際はかなり歪んだ人物。暴力的な性行為やサディスティックな一面を見るとすぐにそれはわかるだろう。
このストリックランドというキャラは一見嫌な奴だが、思い返してみると哀れな中間管理職にしか見えなくなるのも面白いと思う。現代社会で言えば残業しまくっているおっさんを見ているようだ。そんな社会的な歪みを見て取れるのもこの映画の面白いところの一つ。
話を戻すとマイノリティー達の反抗の映画とも取れるということだ。
そして、それは多様性を同時に肯定している。この多様性は現代の映画では欠かせないキーワードとなっていると僕は感じる。
「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」はジェダイと関係のないレイや黒人がフォースを使うことに成功し、レジスタンスとなっている。フォースはジェダイしか使えないと思われていたものが、どんな人でも使えるという可能性を示したのだ。そしてレジスタンスは様々性別や種族を超えた集まりとなった。これはまぎれもなく多様性の肯定である。
「グレイテスト・ショーマン」では、バーナムの率いるサーカスの団員はまさにマイノリティー、社会の鼻つまみものと呼ばれるような者たちだ。彼らはずっと自分を隠して生きていたが、バーナムから勇気を貰って、「this is Me」と叫ぶようになった。これも紛れも無く多様性の肯定だ。
このシェイプ・オブ・ウォーターもそれらの多様性の肯定をはらんでいると思って間違いないのではないかと思う。
そんなマイノリティー達の多様性を肯定して、性別も人種も超えた純愛を描くのは映画的だし、まさにドラマというものを力強く描いている。これにくわえて、冷戦の時代背景と政治要素、どこかおとぎ話のようなところ。そして生々しい性的な部分も美しさも描いている。極めつけは舞台と小物の充実感。そして色彩と水の美しさ。この水にも特別な意味が込められているのだろう。
複雑ながらもシンプルさを兼ね備えているクレバーな映画だ。
こんなに濃厚な純愛ものは中々ないのでないかと思う。
デルトロがぎゅうぎゅうに詰め込んだ想いが凝縮されているかのようだ。
ゆえにシェイプ・オブ・ウォーターは傑作と叫びたい。
ぜひその映画館でそんな濃厚な映像と話を体験してほしい。
今回は以上です。
ーそれでは、また。