偏見と差別。野村芳太郎監督、映画「砂の器」感想
どうも、タコヤキです。
邦画の名作の1つである映画、「砂の器」の感想です。
1974年に上映され、邦画配給収入3位という記録を持っているので、邦画の名作の1つと呼べるでしょう。
原作は松本清張の長編小説であります。こちらは未読なのですが、原作と映画版は設定が少し変わっていたり、描写も差異があるので気になる方は読み比べてみるとよいと思います。
基本情報
「砂の器」
監督:野村芳太郎
主演:加藤剛 島田陽子
脚本:橋本忍 山田洋次
音楽:芥川也寸志
上映時間:143分
配給:松竹
1974年ゴールデンアロー賞受賞、その他の賞もあり
砂の器はどんな人にオススメか?
・邦画のミステリーが好きな人
・悲劇的で泣けるストーリーが好きな人
・社会派サスペンス要素が好きな人
どんな人には勧められない?
・邦画がそもそも好きでない人
・長い映画が好きでない人
どんな作品が好きな人にオススメ?
・新幹線大爆破
・震える舌
・天国と地獄
感想(ネタバレあり)
自分は何も事前情報無しで見たため、どのような話であるのかは見当もつきませんでした。
最初は戦後いくばくかの刑事が殺人事件の捜査を始めていくところから始まるのですが、この捜査が中盤まで淡々と続きます。
やがて事件の輪郭がぼやっと浮かび上がってはくるのですが、それでもまだ謎のまま。終盤になってようやく、事件のきっかけとなった原因がわかるようになります。
その原因は今の時代には想像のつかないようなものでした。
その理由はハンセン病、いわゆる「らい病」というもの。
ハンセン病は今では治療方法もあり、感染しないと分かっていますが、この当時の偏見は差別はすさまじいものがあったのです。
自分はまったく生まれた年が違うので、リアルな事情はよく知りません。しかし、映画内ではそんなハンセン病患者の過酷な生活が描かれています。ハンセン病になった父と子が、村を出て、当てもなく放浪します。その中で村八分にされ、隔離され、いじめのような描写もあります。
この映画のすごいところは、子供の演技にあると思います。
子供は放浪する中で、警官に暴力を振るわれたり、他の子供に苛められているシーンがあります。この時の子供の眼差しがすごい怖くて、迫力があるんですよ。
まるで、世の中を憎んでいるような、それとも普通に暮らしている人達が羨ましいのか。
結局はハンセン病の父とは離れて、やさしい人の下の養子になるんですが、何を思ったのか、その家も出て行ってしまいます。
その子供が戸籍や身分を変え、苦学して、音楽家として社会的に大成功を収めます。
しかし、そんな時に自分の生まれと過去を知る、かつて養子としたやさしい人に出会います。
そして殺人・・・。
社会的地位を脅かされたくないから殺したのか?
それとも、父との仲を引き裂かれた復讐面もあったのか?
その心情はわからずじまいです。
終盤はセリフも少なく、「宿命」という音楽をバックグラウンドに、子供の人生が明らか担っていきますが、ここの臨場感がすごいです。画面に引き込まれるような演出でした。
ハンセン病の父も泣けます。ラスト付近で子供の写真を見せ、こんな子は知らないと嗚咽交じりに叫んでいたシーンはあまりにも辛い。
この映画はすごい感情を揺さぶられるものですが、最後に刑事が「彼は音楽の中でしか父と会うことができない」というのがちょっとピンとこなかったんですよね。
偏見と差別に負けずにここまできた。でももう現実では会うことができないっていう感じなのでしょうか? 読解力がなくてすいません(汗)
この映画は社会的なサスペンスであるのと同時に、ヒューマニティあふれる映画となっています。何より終盤の演出は小説では味わえない描写が多いです。これだけで、見たほうがよいと断言できます。
今回は以上です。
それでは、また。