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映画「ムーンライト」自分が何者であるか決めるのは自分

映画日記

 

こんにちは。タコヤキです。

映画「ムーンライト」見てきました。(ネタバレ注意)

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見てきた感想としては難しいがとても美しい作品です。

全体として、青色がイメージカラーとなっており、作中には美しい青がとても強調されています。これは北野武の「HANABI」や「dolls」と似たような雰囲気があります。

*「HANABI」は青で「dolls」は赤がイメージカラーです。

北野武が好きな人はこの映画はハマるのではないかと思います。(僕は好きです)

 

また、役作りがすごいです。この映画は主人公シャロンの幼少期と10代、成人という3部構成で3人の役者がシャロンを演じます。

この役作りでシャロンという人物像からの3人の役者のしぐさや表情が、見事に違和感無く演じているところがこの映画の凄いところの1つです。

 

この映画には色んな社会問題が含まれています。

黒人問題、同性愛、麻薬、いじめetc

 

主人公シャロンは10代までゲイであることで苛められます。

そして母親と父親は麻薬に夢中。

肩身がせまく、誰にも本音をいえないような日々をずっと過ごしていました。

そんな中で唯一心を許していたのがフアンという人物なのですが、彼はシャロンが大人になる前に死んでしまいます。(原因不明)

シャロン父親も姿が見えなくなり、母親は完全に麻薬中毒になり、苛めもなくなりません。

シャロンの心を許している友人、ケヴィンとの夜のビーチで語り合います。ですがその後に、シャロンとケヴィンがキスをし、お互いを慰めあうシーンがあります。

シャロンはケヴィンを意識するようになります。

でも、その後にいじめグループの悪ふざけでシャロンとケヴィンの関係は引き裂かれ、報復にシャロンはいじめグループの首主犯に暴行を加え、少年院送りになってしまいます。

 

さらに時が過ぎ、シャロンは麻薬の売人となってしまいます。

おまけに今までのシャロンとは想像もつかないほどのムキムキな体といかつい金歯をつけ、その雰囲気はがらりと変わりました。

ですが、ケヴィンから会いたいという電話をうけると、その目は誰かにすがりたい気持ちを感じさせる、シャロンの寂しい目がありました。

シャロンとケヴィンは再会するのですが、ケヴィンは飲食店を営んでいて、すでに子供もいるとのことでした。

そして二人っきりになりシャロンは告白します。「俺の体に触れた奴はあの時以来、お前だけだ」と。

シャロンは子供のように、ケヴィンの腕で眠りました。

ラストシーンは幼少期のシャロンがビーチで月の光に照らされているところでこの映画は幕を閉じます。

 

この映画は黒人社会や同性愛や麻薬など社会派的なところもありますが、やはり一番のテーマになっているのが、シャロンの内面のことです。

 

シャロンは子供の時からずっと心を閉ざし、親からもまともな愛情も与えられず、自分を抑え、ひたすら孤独やいじめに耐えて生きていました。そして自分はゲイであるかどうかで悩んでいます。

そんなシャロンという人間を真っ直ぐに見てくれる人間は誰もいませんでした。

そんな中でケヴィンだけがシャロンを見てくれました。

だが、二人は引き裂かれてしまうー。

 

ラストでようやくシャロンは本音をケヴィンに告白するのですが、あれがシャロンの初めての本音であり、シャロンの本当の姿だったわけです。

 

僕の好きな小説家の田中芳樹先生〈代表作「銀河英雄伝説」、「アルスラーン戦記」〉がこう言っていました。

 

物語には大きく2種類に分けられる。

1つは復讐。もう1つは宝探しであるー。

 

この映画シャロンの宝探しであり、その宝とはシャロンという人間の本当の姿です。

苦痛だらけの人生を送ってきたシャロンにとって、ケヴィンに本当の気持ちを伝える事で、自分自身と真っ直ぐに向き合い、シャロンという人間を取り戻し、長い間閉じ込めてきた本当のシャロンを開放させることができたのです。

ラストシーンはようやくシャロンが月の光を浴びられ、本当の姿が照らされたという意味で感動的なシーンです。

 

そして幼少期にフアンがシャロンに海で泳ぎを教えているときのセリフ

自分の道は自分で決めろ

 

これって自分の事は自分で決める。自分が何者であるのか決めるのは最終的には自分自身であることを強く伝えようとしていると思います。

シャロンはラストシーンでようやく、自分を見つけ、自分が何者か決める事ができたのです。

 

ムーンライトは自分を取り囲む社会の問題から、自分を長い年月をかけて取り戻す、

感動的で美しい作品です。

よかったら劇場で見て見てください。

 

ーそれでは、また。